ニッタ・デュポンが日本ノーベルと挑んだ「間接部門DX」の全貌
1983年設立のニッタ株式会社と米国デュポン社の合弁会社。半導体やシリコンウェーハ、ガラス基板などの製造工程に不可欠な研磨用消耗資材(パッド、スラリー)の製造・販売を手掛けるリーディングカンパニーです。最先端の研磨技術を核としたトータルソリューションをグローバルに展開しています。
世界トップシェアの半導体研磨用消耗資材を提供するニッタ・デュポン様の製造現場では、ERP標準機能と実務との乖離による情報の分断とリードタイム長期化が課題でした。そこで、日本ノーベルは、従来のシステムを維持しながら業務プロセスを再設計する「intra-martによるERPフロントの構築」を提案、受注から後続業務までをシームレスに繋ぐデータ基盤を開発しました。その結果、新製品登録にかかるリードタイムの約7割減に成功し、ビジネスの加速に寄与しました。
伊東氏: 私たちサプライチェーン本部は、需要予測から生産管理、購買調達、そしてロジスティクスまでを一気通貫で管理する役割を担っています。当社ではERPとしてSAP等を導入していますが、半導体業界の激しい変化や日本国内特有のきめ細やかな承認フローに、ERPの標準機能だけで対応することに限界を感じていました。システム化できない領域は現場でのExcel管理やメール連絡に頼らざるをえず、情報のタイムラグや手作業による転記ミスも発生していました。まさに、ERPと現場の溝が意思決定のスピードを阻害していた状況でした。
濵渦氏: 特に「新品目コード発行(NMI※1)」のプロセスが深刻でした。新製品をシステムに登録し、受注・出荷を可能にするには、品質管理や法規制対応など複数部門との調整や承認が必要です。この重要な工程がアナログ運用だったため、完了まで平均7〜8営業日を要していました。手作業によるミスの防止と進捗の可視化、そして、ERPの堅牢さを生かしつつ、現場の柔軟性を補完する仕組みの構築が、製造DXを加速させるための命題でした。
※1 NMI(New Material Introduction)…新製品を基幹システムに登録し、正式な品目として扱うための業務プロセス。
伊東氏: 最大の決め手は、日本ノーベルの製造現場への深い理解と安心感です。以前から製造実行システム(MES)の開発等を通じて厚い信頼関係があり、当社の複雑な業務フローを熟知していました。提案された「intra-mart」は、他システムとのデータ連携が極めて柔軟であることに加え、専門的なプログラミングスキルがなくても開発できる「ローコードプラットフォーム」であることも魅力でした。
将来的には、自分たちでシステムを維持・改善し続ける「内製化」を構想していたので、日本ノーベルが高い提案力でシステムを構築するだけでなく、私たちのDX人材育成まで含めた自走支援を提案してくれたことが、採用の大きな後押しとなりました。
伊東氏: プロジェクトでは5つのシステムを段階的に構築する構想です。1つ目はNMI、2つ目は見積管理システム、3つ目は購買システム、4つ目はデマンドフォーキャストシステム※2、5つ目はデマンドプランニングシステムです。 注力したことは、単なるデジタル化ではなく、属人化されていたプロセスの再定義です。システム化の過程では、これまで手作業で行われてきた例外的な業務フローが次々と明らかになりました。それらを漏れなく仕様に落とし込む作業に多大な時間を要しましたが、個人の裁量に依存した曖昧な運用をそのままシステム化しても実効性は得られません。そこで、実務に精通したメンバーと議論を重ね、将来的に自分たちを助ける武器となるよう、業務を徹底的に磨き上げました。
濵渦氏: 技術面では、広範なデータ連携基盤の構築に注力しました。SAPやSalesforce、製造部門の品質データベースなど、複数の既存システムとリアルタイムで正確に連携させる仕組みは、間接部門DXの成否を分ける急所でした。プロジェクトの途中で体制変更もありましたが、「intra-mart」のローコードという特長を生かし、テスト環境での挙動と実務の要件を照らし合わせながら細かな調整を迅速に繰り返すことで、複雑なシステム連携と使い勝手の良さを両立させることができました。
※2 デマンドフォーキャスト…過去の実績や市場予測に基づき、将来の需要を予測すること。
伊東氏: 最大の魅力は、「高い提案力」と「圧倒的な伴走力」です。私たちの拠点を行き来し、実務上の細かな困りごとまで丁寧に拾い上げるきめ細やかさに信頼を寄せています。単なる開発ベンダーの枠を超え、実務の課題を「自分ゴト」として捉えて解決策を共に模索してくれました。顧客の成果に真摯に向き合う姿勢を高く評価しています。
伊東氏: 最も大きな成果は、システム間連携による効率化と業務品質の担保です。人の判断を介さず、重複作業を徹底的に排除したことで、新製品登録のリードタイムを最短2日にまで短縮できました。また、ワークフローをシステム化したことで、各承認ノード(ステップ)の担当者の責任が明確になり、入力情報の精度が飛躍的に向上しました。この成果は当社のDX戦略の礎となると評価しています。
濵渦氏: 生産現場の視点では、承認プロセスの可視化によるメリットが非常に大きいです。書類の滞留や紛失が無くなり、また検索機能が充実したことで過去のデータ照会にかかる時間も劇的に短縮されました。最初は操作に戸惑う声もありましたが、今では「状況が一目で分かり助かる」といったポジティブな声が大半です。さらに、現場担当者から「このデータを使えば、あの作業も自動化できるのでは?」と自発的な改善提案が出るようになったことも嬉しい驚きでした。これは単なるツール導入を超えた、大きな意識改革だと感じています。
伊東氏: 今回の「intra-mart」をプラットフォームとしたERPフロントソリューションの構築は、間接部門DXの強力な推進基盤となりました 。単なる業務のデジタル化に留まらず、ERPと実務を柔軟につなぐことで、迅速な意思決定を支える先行指標をリアルタイムに得られる体制が整いつつあります 。今後はこの基盤を最大限に活用し、デマンドフォーキャストシステムへのAI導入など、より高度なサプライチェーンの構築を通じて、事業拡大に即応できる強固な生産基盤を確立していきます。
濵渦氏: 今後は、実務主導による自律的な業務改善サイクルをさらに強化したいと考えています。そのためには、デジタルを使いこなせるDX人材の育成が不可欠です。日本ノーベルには、単なる保守・運用に留まらず、内製化に向けた技術教育や知見共有を今後も期待しています。
ニッタ・デュポン様は、半導体製造工程で不可欠な研磨材市場で大きく事業拡大されています。その中で、間接部門の業務改革として間接部門DXを推進する決断をされました。間接部門DXのパートナーとして弊社を選んでいただき、弊社が提案した「intra-mart」を導入してくださったことは大変光栄であり、同時に責任の重さを感じております。「intra-mart」をプラットフォームとしたERPフロントソリューションで、間接部門DXの構築、展開から運用まで末永くサポートいただけるように努めます。
※intra-mart®は、株式会社NTTデータ イントラマートの登録商標です。