ALT(アルト)は、韓国発のICT企業として2017年に設立。5GやIoTと連動したデータ事業、スマートデバイスを中心とするモバイル事業、AI対応のセットトップボックスやタブレットなどを扱うメディア事業を主軸に、多様なデバイスとソリューションを展開しています。韓国国内で、シニア向け・キッズ向けなどのセグメント市場に特化したスマートフォンを展開してきた同社は、2024年、日本法人である株式会社アルトジャパン(ALT Japan)を設立。2026年より、スマートフォンを中心としたモバイル製品を軸に、日本市場での本格展開を開始しています。
総務省の「情報通信白書 令和7年度版」によると、インターネット接続端末としてのスマートフォン利用率(2024年時点)は74.4%。20代では91.6%に上り、60代は78.8%、70代でも53.0%です。スマートフォンがこれだけ普及している一方で、シニア層を中心にフィーチャーフォン、いわゆる“ガラケー”を使い続けたい人たちがいるのも事実。とはいえ、家族や友人との日常的な連絡手段として定着しているメッセージアプリは使いたい……と考えている人は少なくないでしょう。
実は韓国でも潜在的なニーズは同じ。韓国のALTはこのニーズに応えるため、2022年、“ガラケーのように物理キーが搭載されている折りたたみスマートフォン”というユニークなデバイスを開発・発売しました。ALT Japan COOの金希哲(キム・ヒチョル)氏は、「ALTの特徴であり強みは、他社が踏み込まないニッチなマーケットに対して、機動力の高い体制で素早く開発し、製品を投入していくことです。韓国国内で、シニア層をターゲットとするガラケー型スマートフォンをテスト的に商品化したところ、大きな反響がありました」と話します。手応えを得た同社は、2025年に第2世代機を発売しました。韓国では累計約100万台を売り上げる大人気シリーズとなり、通常のスマートフォンから乗り換えるユーザーも多いといいます。
次に同社が取り組んだのは、第2世代機の日本への展開。日本市場への初参入にあたり、最も重要視していたのは“品質”でした。「ALTが日本で展開する最初の製品ですから、検証は徹底的に行いたいと考えていました。自分たちだけでは解決できない課題もあるため、日本の第三者に検証を依頼することは最初から決めていました」と金氏は話します。
日本向けローカライズは、膨大な文字列データベースの翻訳と日本国内でのフィールドテストを重点的に行う必要があります。あわせて、全機能の動作検証を実施し、発見された不具合の修正や最適化が不可欠です。これらを、数カ月の間に行わなければなりませんでした。日本在住約20年のプロダクトマネージャー 申洞浩(シン・ドンホ)氏は、「日本で検証を請け負ってくれる会社はたくさんありますが、携帯やスマートフォン自体のすべての機能、性能を検証できる会社は、私が知る限り片手で数えられるくらいしかないと思います。日本ノーベルは前職でお願いしたことがありますが、他2社も含めてしっかり検討し、面談なども行いました」と振り返ります。
日本ノーベルの「開発検証サービス」は、組込みシステムの開発加速と品質担保の両立を目指し、開発段階の検証から最終検証までの請け負いや、テスト環境そのものの最適化などを行う検証サービスです。10年以上にわたるモバイル端末の開発・検証で培った高度な知見を強みに、一貫したサポートで、シフトレフトと品質安定化を支援します。
「今回われわれに必要だったのは、開発段階から最終検証に至るまで、日本語対応の確認も含めた総合的な検証でした。日本市場が求める高い品質を確保するうえで、日本ノーベルなら安心して任せられると判断しました」と申氏は話します。
日本ノーベルの検証チームは、ALT Japan社内に常駐し、開発途中から並行して検証を開始しました。時には「どう実装すべきか」を開発側と一緒に悩みながら、日本のシニア層向けのデバイスを磨き上げていったのです。
日本ノーベルの検証について、申氏はこう語ります。
「検証チームとの連携はとてもスムーズで、われわれの考えをくみ取ってきめ細かく対応してくれました。特に助かったのは、日本語の表示だけでなく、ネイティブの日本人から見て違和感のある動作についても指摘や提案をしてくれたことです。たとえば日本人には不自然なアドレス帳の並び順、着信時に相手の名前を読みあげる「音声案内」での発音の間違いなどは、われわれだけでは気付けなかったでしょう。IMEの使い勝手や操作性向上に対する指摘もあり、開発途中で仕様を変更するという大きな決断もしました。でもそのおかげで、日本の方にストレスなく使っていただける製品に仕上がったと思います」。
2026年2月、日本参入第1弾となるガラケー型スマートフォン「MIVEケースマ(マイブ ケースマ)」が発売されました。潜在的なニーズに応える、これまでにない製品は、「びっくりするくらいの反響」と金氏が語る通り、日本でも大きな注目を集めています。シニア層はもちろん、若年層にも支持が広がっており、ユーザーからの評価も高く、家電量販店やMVNOでの取り扱いも増えています。さらに、発売後の主要なソフトウェアクレームはゼロを維持しており、同社が目指してきた“高品質”の実現を裏付けています。
現在ALT Japanでは、2027年に向けて、日本での第2弾となるガラケー型スマートフォンの第3世代機を準備しています。また、携帯やスマートフォン以外のデバイスも含め、またBtoCだけでなくBtoBも視野に、複数の製品を検討しています。日本市場を想定して日本法人主導で企画した製品を、韓国に展開するという可能性もあるといいます。
「今回、日本ノーベルが行ってくれた検証にとても満足しています。今後の製品開発でもお願いしたいと考えています」と金氏は話します。
市場や顧客が求める新たな体験を創り出す。潜在的なニーズを見つけ出し、他社が手がけないニッチなマーケットに「これが欲しかった」という製品を届ける。ALT Japanの挑戦は、まだ始まったばかりです。