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東芝キヤリア株式会社は業務用の空調機、冷凍機、給湯装置などの設計、製造、販売、サービスまでを一括して行っています。 日本国内では川崎に本社があり、静岡の富士事業所、掛川開発センター、岡山の津山事業所の4つが主な拠点となります。
東芝キヤリアでは、業務用空調管理コントローラーのテストに、日本ノーベルの組み込みソフトウェアテスト自動化システム「Quality Commander 」を採用しています。
業務用空調機の集中管理コントローラーは、1つで100台以上の室内機を操作でき、運転停止、温度設定、運転スケジュール設定など多くの機能を搭載しています。GUI操作部分はタッチパネルのカラー液晶となっています。
この空調管理コントローラーのタッチパネルをQuality Commanderを使って操作し、タッチ操作が正常に受け取れるか、空調の運転がかかるか、といった確認を自動で行っています。テスト結果の判定は液晶画面をカメラで撮影し、画像判定することで自動化しています。
同社には、空調コントローラーに現場から不具合の報告があっても、再現テストでなかなか不具合が再現しないという問題がありました。再現性が低い場合、何百回何千回と繰り返しテストを実施することになるため、人手だと数日かかり、時間の確保が難しくなります。また人による操作では、タッチパネルの押し方や操作タイミングにばらつきがあり、再現性の担保が難しいという問題もありました。
不具合の再現を行う際には、ハードウェア、ソフトウェア、現場環境のどこに原因があるかを探っていきます。ソフトウェアで操作のエミュレーションができるツールもありますが、お客様が実際に操作する条件に近づけるためには、ハードウェアを物理的に操作することが必要です。「ソフトシミュレーターでやってしまうのは問題の解決にならないだろうと。物理的に操作したかったというのは大きいですね。」(東芝キヤリア 技術統括部 システムソリューション開発部 櫻井 廣一郎 氏)
Quality Commanderは実機のタッチパネルをロボットで操作できるため、実際の利用状況に近い形で再現テストを自動化できます。Quality Commanderで自動化することで、これまで人手で1日200件、300件の試験回数だったものが、1日何千件という回数も可能になりました。またロボットによる操作のため、同じ箇所を同じタイミングで操作できるようになり、人に比べて再現性の精度も高まりました。
再現テストだけでなく、リグレッションテストにも試験回数の課題がありました。ソフトウェアのバージョンアップのたびにリグレッションテストを行い、修正内容が他の既存の機能に影響がないか確認します。しかし、すべてをテストし直すには非常に工数がかかり、時間確保が難しい状態でした。
Quality Commanderを使う事で、リグレッションテストでも、より多くのテストを短時間で行えるようになりました。 「今までと同じ機能であれば、全く同じシナリオを動かせば、次の日の朝にはテスト結果が出ていて、デグレードはないと確認できます」(櫻井氏)
また、Quality Commanderで多くの試験回数を重ねて「問題が起きなかった」という第三者的な評価を得られることが、開発者の安心感にもつながったといいます。
元々、同社では再現テストの操作を自動化できるツールを探していました。複数のツールを比較し、導入実績が豊富にあること、テストシナリオが簡単に作れること、対象装置の組み換えができることからQuality Commanderが選ばれました。
最初は2カ月のレンタルで導入し、再現テストを試しました。運用負荷や試験実行速度、画像判定の精度など、自動試験に十分耐えられることを確認できたため、購入して本格的に運用することになりました。
特に決め手となったのが、テストシナリオが簡単に作れ、テスト対象装置の組み替えも容易にできるという点でした。テストシナリオの作成が難しいと、せっかく導入しても同じテストを繰り返すだけになってしまい、そのうち使われなくなってしまう事が想定されます。そのため、東芝キヤリア内でシナリオを作成、編集できるという事が重視されました。
テストシナリオはC言語と似たような構文となっており、タッチパネルの操作座標の入力はマウスクリックで簡単に行えます。「プログラミングをしている人であれば、特に問題なく作成できるのでは」(櫻井氏)
Quality Commanderの導入で夜間や土日も自動実行できるようになり、不具合再現テストの生産性を、人手と比較して約4倍に向上できました。またQuality Commanderでタッチパネルを常時操作することで、メモリリークが発生しないことの確認や、操作を伴った連続通電試験といった耐久試験も行えるようになりました。テストの実行結果が何回何時間行ったという記録で残り、ログも取得できるため、資料としてまとめるのにも使いやすいとのことです。
「市場で問題が起きた場合は、当然こんなコストで収まらないので、少なくともこれで防げる不具合の費用対効果としては十分に高いかと私は思います」(櫻井氏)
今後は自動化できる部分をQuality Commanderに任せて、試験者の方には自動化が難しいテストや、テストシナリオの作成に注力してもらい、テスト範囲を広げる方向で強化していきたいとのことです。
Quality Commanderの直交型ロボットで、空調コントローラーのタッチパネルを自動操作しています。ロボットの上部にあるカメラで液晶画面を撮影し、画像判定でテスト結果のOK/NGを判定します。